2011年7月26日火曜日

「渋の谷への扉」

第18章 ある舞台の裏側

 前時代的な電子レンジの前に三つの影が人知れず集まった。




           
               うーん?

●×△?○■・・・
 



「まだマウスの調子が悪いらしいですよ」
 辺りを憚る様に《装飾師》がこそっと言った。
「新しいマウスに変えれば良いのに、きっとお金が無いんですね」
 憐みを表出させた《いたずら師》がそう受けた。
 疲れを滲ませながら、それでも穏やかな表情で《知識師》が口を開いた。
「右クリックが使えなくて、キーボードを使っても如何しても『名前を付けて画像を保存』が出来ないみたいですよ」
「だから今回は以前に使用した画像を挿入してお茶を濁している訳ですか?」
  ずばり確信を突いた《装飾師》の問いに、《知識師》が苦笑いを浮かべた。

「て言うか、この時代にまだマウスを使用して居るなんて!」
 《いたずら師》が呆れた様に声を上げた。 
「折角新しいいたずらを披露しようと思ってたのに・・・」
 心底残念そうな《いたずら師》の心の叫びが四方の壁に木霊した。

「いつまでこの状態が続くのですかね?」
 心配そうに《装飾師》が口元を震わせた。
「さあ、いつまでですかね。ところで・・・」
 一転して楽しそうな声音で《知識師》が続けた。
「良いお店が有るのですが・・・」
 今までの話の内容は瞬く間に何処かに消え去り、三つの影は浮き浮きした様子で酒処の話題に変じて行った。

2011年7月24日日曜日

「続・傍観者の小さな冒険 彼の地にて」

第五章 ある舞台裏

 森の隅に三つの影が人知れず集まった。




「何か、マウスの調子が悪いらしいですよ」
 《装飾師》が徐に切り出した。
「貧乏人はこれだから困るな、大金持ちの俺様を見習えば良いのに」
 不満そうに吐き捨てた《いたずら師》は、そう言うと上空を旋回し始めた。
 少々疲れ気味の《知識師》が話を続けた。
「右クリックが使えなくなったみたいですよ」
「それが使えないと何が不便なんです?」
 《装飾師》の問いに《知識師》が懇切丁寧に答えた。
「イラストをダウンロードする時の『名前を付けて画像を保存』が出来ないみたいです」
 真剣な面持ちで《装飾師》は《知識師》の説明に聞き入っていた。
「キーボードの右側のCtrlキーの左にあるキーで右クリックの代用が可能なのですが、イラストが選択出来ないので今回はその方法は使えないとの事です」
 
 頭の上から《いたずら師》の声が響いて来た。
「折角俺様の釣りチャレンジでの冒険譚を聞かせてやろと思ってたのに・・・」

「つまり新しいイラストを挿入出来ないと言う事ですか」
 残念そうに《装飾師》が口元を歪ませた。
「そう言う事です、ところで・・・」
 一転して調子を変えた《知識師》が続けた。
「良いお店が有るのですが・・・」
 三つの影は浮き浮きした様子で西の空へと飛んで行ってしまった。